最近ネットフリックスでは、ザ・クラウンを見ているのだけど、このネトフリのボタンを押して画面を開いたら新しい作品?おすすめとかで、「ケイブ・レスキュータイ洞窟決死の救出」が突然出てきた。
https://www.netflix.com/jp/title/81305964
これはまだ記憶に新しい数年前にタイで起きた、サッカー少年らが洞窟に閉じ込められた事件についてのドラマ化だった。予告映像を見るとタイ東北部を鳥観図で見る映像が実に美しい。ちょっと気になったので、ザ・クラウンを小休止して見始めたら、これが面白かった。エピソード1から6まであって、かなり見ごたえがあったので、おすすめである。
映像が素晴らしい
ドラマはまず、洞窟に閉じ込められることになる少年たちを紹介するところから始まる。タイ国境のタチレクという名前が出てくる。いきなりタチレクという地名が出てきたのには驚いた。私が愛読している下川裕治氏のアジア辺境の旅の本に度々登場する、ミャンマー国境の街だ。
このミャンマーから国境を超えて来る少年がいる。またメーサイの町に住む少年もいる。それぞれの少年がどのような家に住んでいるのか母親らとどんな生活をしているのかもちらっと垣間見えるように描かれ興味深い。ドローンによる空撮で描かれる、タイ北部の風景が美しい。タチレクの国境、そしてメーサイ周辺の街並みがとてもきれいに映されている。
また、さすがNetflixは金をかけているな、というところである。豪華で、映像の映し方、アングルなど実にこだわっていることがわかる。映画のようなクオリティーである。
脚本が良い
前半はタムルアン洞窟へ入った子供たちがはたして無事なのか、見つかるのかという発見までの緊迫した展開に、家族、知事、タイ・シールズ、気象予報士や様々な人がからむ。そして、発見後の後半はいかにして救出するかの緊迫した展開となる。
どのエピソードも目が釘付けなのだが、個人的には、とりわけエピソード5が印象的だった。タイムリミットが迫る中、子どもたちにダイビングさせるのか、それとも空気を送り込んで数ヶ月先まで留めるのか、選択を迫られるという緊迫した中で、親たちの思いが交錯する。ダイビングに賛成する親が出てくる中、かつて娘を亡くした母親はもう死なせることはできない、とほかの人をなじる。タイ政府幹部と知事、ダイブ専門家の意見がぶつかり合う。それぞれの思いが交錯し、また葛藤が実にうまく表現されていると思った。
キサー・ゴータミーの寓話
娘をかつて亡くしたその母親が嘆く中、お坊さんが「キサー・ゴータミーの寓話」の話をする。私も初めて聞いた話なのだが、とても印象に残った。昔、愛児を亡くした母親がその子を何とか生き返らせてほしいと会う人ごとに哀願する。しかし当然どうしようもない。そこへ釈迦がやってきて、それでは、いままで死者を出したことがない家のケシの実をもらってきなさい。それを持ってくれば、子供は生き返るであろう、と言うのだ。彼女は必死に一軒一軒を回ったが、どの家でも父や祖母や子供、叔父叔母などを亡くしていて、死者の出てない家などなかったのである。そこで、ふっと彼女は生きとし生けるものは死を免れることができず、その悲しみを胸に抱いていくしかない、ということを悟るのであった。と、仏教国タイならではの寓話が挿入されていた。
俳優が素晴らしい
コーチ役には、パパンコーン・ラークチャレアムポート。彼の演技はとても良かった。それなのに、何という悲しいことに彼は今年、睡眠中に突然死してしまっていたのだ。それは最後のクレジットで伝えられる。
チェンライ県の知事役のタネート・ワラークンヌクロは特に素晴らしかった。後半の救出活動での葛藤、決断、そして祈り。気象予報士のインターンのヌン、水理学者のケリー、などタイ側の俳優も実に素晴らしかった。それのみならず、母親たちの演技が、演技とも思えないような自然さなのだ。そのあまり本当なのかと思えてくるのだ。彼らがタイにおいては名のある俳優たちなのかは知らない。しかし、日本のドラマがつい声高だったり、演技が過剰だったりするのを見ていると、微妙な表情による心理描写がとてもうまいと思うのだ。
ダイビング専門家など欧米人も活躍をするが、タイ側に寄り添った作りだったと思う。
皆さん、これはおすすめです。
そして、2023年3月にメーサイを訪れた際に、このタムルアン洞窟まで行ってきた。ドラマを見ていてこの場所を訪れると感慨はひとしおのものがある。その記事はこちらからどうぞ。
ちなみに、以前には映画でもこの題材が取り上げられていたようです。ご興味があれば、こちらもどうぞ。
では、また。