タイに行くと繁華街のバーやレストラン、あるいはナイトマーケットからさえ重低音の響く、爆音が良く聞こえてくる。野外でモーターショーやチューンアップ・カスタムオーディオショーが行われていれば、そこで沢山のスピーカーを繋いだ車から爆音が鳴り響き、荷台ではコヨーテガールが踊っていたりする。重低音が体に響くリズムを刻む。
爆音のオーディオチューンアップカー。
踊るコヨーテガール
時と場合によっては、お寺からも大音響が聞こえてきたりもする。
この爆音・重低音というのもタイの魅力のひとつの側面だと思う。この重低音には人間の根源に迫る強烈な魅力があると思うのだ。では、一体なぜこのような重低音を響かせるカルチャーができあがったのかに興味をもった。
そこでネットで調べているうちに、ふと思い起こしたのが、かつて公開された「バンコクナイツ」という日本映画だ。その映画を見に行っていた。たしか、ある場面ではタイ東北部(イサーン)の田舎で、巨大スピーカーとアンプをトラックに備え付けたサウンドシステムを移動させながら、打楽器奏者やピンというエレキギターのような楽器をかき鳴らしながら練り歩くというシーンがあった。
調べてみると、このような移動音楽隊は、イサーン地方においては得度式(タイの若者は一定期間お坊さんになる)や冠婚葬祭で爆音・重低音を鳴り響かせてパレードをするもので、この演奏をピン・プラユックと言うらしい。日本で言えば、かつてあった(いまはもはや見当たらないが)チンドン屋をより強力なアンプ機材で補強したようなイメージだ。
Youtubeでみると、それが電気音としてアンプで増幅されて、巨大スピーカーから流されるのだ。スケールが違う。
流される音楽はモーラムやルークトゥンなど、イサーン地方をルーツとする民族音楽の系譜だ。特にモーラムは聴いていると実にトランス効果があるような気がする。ルークトゥンは日本で言えば演歌のようだ。
例えば以下はコンケーンのバンド、Rung thawiのパレードの音楽だそうだが、このMolam音楽は凄いと思う。
更に調べてみると、このモーラムなどの音楽を巨大な爆音トラックの荷台で歌手やバンドともに演奏するというイベントをYoutubeでみることができた。
こちらはトラックオーディオチームのパレードの模様だ。人々が音楽に合わせて歩きながら踊っている。実に楽しそうだ。
この爆音トラックのことを「ロットヘー(รถแห่)」というらしい。例えば、イサーン地方でこのようなトラックがやって来て、まさに屋外フェスのような感じでイベントが繰り広げられるらしいのだ。
これを見るともはやこれは欧米におけるEDMイベントに匹敵するような、ライブ・イベントに見える。多くの若者が集まり、大音量のモーラムに身を委ねている。このようなカルチャーで子供の時から育っている彼らにとって、この重低音が鳴れば自然と体が踊りだすようだ。
例えば、BNK48にもこのモーラムを取り込んだ楽曲があるようだ。
このように体に染みついたたイサーン音楽、その爆音・重低音の音楽、そしてダンスのカルチャーというものは彼らのソウルとなっている。そして、そのまま今のバンコクでのバーなどに受け継がれているではないだろうか。そこでは、同じように爆音が、重低音が鳴り響かないと何となく物足りないのだ。どうだろうか。
以前にチェンマイのタワンデーンというイサーン音楽・歌謡を聞かせるショーレストランへ行ったが、そこも大音響と踊る人たちで凄かったことを思い出した。
ではまた。