箱根駅伝の裏番組で、Eテレにて「劇場版ごん」というアニメ(人形のストップモーションによる映画)が家人によって録画されていたので、一緒に見た。
題材はご存じ、新美南吉の児童文学「ごんぎつね」である。小学校の教科書にも必ず載っている定番の児童書である。というものの、実はどういう話だったかが、思い出せないでいた。
この映画はわずか28分という短い映画なのだが、そこには日本の田舎の秋の情景を実に見事にストップモーションで表しているのだった。田舎家の風景、光の当たり具合が実に美しい。
心優しい兵十はきつねを撃つことができなかった。
ある日、兵十は川でウナギを捕まえて、病気の母親に食べさせたいと囲っておいた。そのウナギを、ごんがいたずら心で逃がしてしまう。それから、何日かして葬式の列が通り過ぎ、兵十の母親が死んだことを知る。そして、自分がしたいたずらに気づき後悔するのだった。
ごんは何とかその償いをしたいと考え、栗や松茸、あけびなどをこっそり持っていくのだった。
そのお返しに、彼岸花がそっと置かれていた。
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日本の田舎の原風景が美しく表現される。トンボが舞う風景、彼岸花の咲く風景、田舎家の情景。どれも光と影をうまく使いながら、見事な映像美で見せる。
人形は木彫りのものだが、ごんぎつねはごんの立場からは擬人化されて表現され、兵十らの立場からはきつねとして表現されている。
ごんはいたずらをしてウナギを捕ってしまったが、そのウナギが兵十にとってどういうものだったか、気づくのが遅かった。
一方、兵十はこっそりと置いてあった贈り物が誰がくれたものだったのか、気づくのが遅かった。
そして、この物語の最後は、お互いに相手のことを思いやることの難しさを表している。
お互いに理解することの困難、そして手遅れであることが、実に切ないのである。
28分の映像に素晴らしいものを見た。おすすめです。
ではまた。