2日目は最初の寄港地、宮古に11時入港予定だ。昨夜はけっこう激しく揺れたせいか、早朝の船内は静かだった。フィリピンのクルーが所在なげに立っているラウンジでコーヒーを飲んだ。
目次
2日目朝食~ 宮古入港
朝食はなんとなく揺れで食欲がなかったのだが、レストラン春日の洋食を食べてみることにした。朝食は2か所のレストランから選ぶことができる。和食と洋食バイキングの瑞穂、そして洋食の春日だ。この日は入港が11時ということで朝に時間があったので、オーダーで頼む卵料理やパンケーキに時間がかかっても大丈夫ということで春日を選んだのだった。
パンケーキはプレーンとその日のフレーバーの2種類があって、両方を頼むこともできた。卵料理はオムレツやスクランブル、フライドエッグ、ボイルドエッグから選ぶことができた。オーダーメニューの他には、テーブルサービスとして、スープ、パン、フルーツ、コーヒーなどがあった。更にセルフサービスで、サラダやヨーグルトなど取ることが出来た。結構一杯になってしまった。
テーブルにはメニュー表が置かれていたのだが、昔の(大正時代~昭和初期か)大阪商船時代の広告の絵柄を印刷したものになっていて、往時の模様がうかがえるようになっていた。神戸基隆間が一等で65円とある。現在価格にして約26万円といったところか。
さて、船は三陸沖を北上を続けて、本州最東端の魹ヶ埼灯台を通り過ぎた。こんなところに最東端があるとは知らなかった。
少しすると、宮古湾に向けて左へ入って行った。
船内テレビでは船の現在位置や航跡を見ることができた。
あの奥の方が宮古の港のようだ。昨日は悪天候だったようだが、今日は晴れてきていた。湾内に向けて次第に波がおさまってきていた。
船で目的地に到着するというのは初めての体験だ。次第に宮古港の藤原ふ頭が近づいてくる。屋根にMIYAKOと書いてある。電車や飛行機であればあっという間に到着する。なんら感傷にふけっている暇はない。慌ただしく降りることになる。しかし、船の旅では接岸するまでに随分と時間がかかる。
その間に周りの景色を眺め、これから訪れる場所について夢想する時間がある。船の旅にはそのような情緒的な時間があるのだった。
屋根に書かれた大きなMIYAKOの文字を見ると、はるばる宮古までやってきたのだという思いがする。大勢の人が大漁旗を振っている。昨晩のカクテルパーティーで、クルーから東北の寄港地の歓迎ぶりは本当に素晴らしい、という話があったが、本当にそうだと思った。
にっぽん丸は無事に接岸した。
岩手県宮古市キャラクター「サーモンくん・みやこちゃん」も待ってくれていた。
鮭の街宮古をPRする双子のサケの兄妹だそうだ。このみやこちゃんのボンボンは、なんといくらで出来ているという。口元がオバQみたいでかわいいのだ。
にっぽん丸の宮古港への寄港は今回がちょうど20回目ということで、すごい歓迎ぶりだった。
地元小学校の児童による小沢獅子踊りが披露された。
また、お振舞として、秋刀魚のつみれ汁をいただいたが、とても美味しかった。
寄港地ではオプショナルツアーや、自由行動など好きに選んで出港までに時間を過ごすことができる。
オプショナルツアーは1)ようこそ宮古、2)神秘の地底湖 龍泉洞を訪ねる、3)三陸鉄道レトロ車両乗車と絶景北山崎 という3つのコースがあった。どれも1万円を超える結構な値段なのだ。 当日はバスが迎えに来てそれに乗り込んでいくという形だ。バスガイドさん、そしてにっぽん丸クルーも添乗し、バスの道中はバスガイドさんの話を聞くことができるようになっていた。
この模様はまた別途記事にしたいと思う。
感動的な出港風景
さて、16時ごろに三々五々乗客が戻ってくると、17時の出港に向けて出港セレモニーが行われた。地元中学生による吹奏楽の演奏が披露された。
そして、いよいよ宮古ともお別れとなったが、そのときハプニング的に小さい子供が「にっぽん丸、また来てねー。」と繰り返し声をあげた。そのバックにはいつの間にか蛍の光が流れていた。日は傾き、夕暮れとなっていた。それは実にエモーショナルな光景で、ふいに頬を涙が伝った。
電車や飛行機では恐らくこういうシーンはない。船旅ならでの情景だ。にっぽん丸に乗ってよかったと思えた時間だった。しだいしだいに岸壁が遠くなる。その中いつまでも手を振り続けていた。
にっぽん丸がいただいた歓迎大漁旗は吹き抜けのロビーに高々と掲げられていた。サイズがちょうどぴったりだった。
出港するとまもなく、夜のメイン・イベントである浅野祥プロジェクトのコンサートが始まる。2部制となっていて、ディナーの前後に参加するようになっている。クルーズというのはゆったりしているようでいて、イベントが目白押しである。全てに参加しようものなら大忙しである。
浅野祥プロジェクトは素晴らしかった。
ほとんど知らずに、若干Youtubeで調べた程度で拝見したのだが、のっけの津軽じょんから節が正統な津軽三味線で始まったが、二曲目から浅野祥の歌う、民謡フュージョンと言っていい、新しい形での民謡の歌、演奏には痺れた。彼の歌声が素晴らしく、そしてピアノ、ベース、という西洋楽器と二十五絃箏、津軽三味線という和楽器のフュージョンであり、またジャズを取り入れた演奏は実に多彩であった。グルーブ感たっぷりの演奏はハイレベルで、圧巻としか言うことがない。
民謡という独特の節回しは、しかし日本人にとってはどこかで聞いたことがあるものであり懐かしい。その音楽が従来の枠を超えて、下のチラシに書かれているように世界のさまざまな音楽と融合して演奏された。これは民謡というものを将来へ伝承していく意味でも実に新鮮だった。
MIKAGE Projectとして世に問うているようなので、ぜひこれからも注目していきたい。
ところで、二十五絃箏というのは初めて目にし耳にしたのだが、幻想的な音色も響かせていた。それにしても、二十五絃箏は調律がなかなか大変そうであった。
瑞穂での夕食。
夕食後もカジノや夜食、ラウンジなど夜遅くまで楽しむことが満載で、夜は更けていくのだった。
夜、デッキに出てみると月が水面に反射しているのが見えた。本当はもっと暗いのだが、写真にすると明るくなってしまった。
ではまた、次回へつづく。