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映画「生きる LIVING」を観てきた。 ネタバレあり。

黒澤明の名作「生きる」をもとにしたイギリス映画ということで、どんな作品なのか観に行ってきた。

ikiru-living-movie.jp

 

かつての黒澤作品は多分40年くらい前に、東京のどこかの名画座で見た。その時よく覚えているのは、見ていたおばあさんらしき人が終演後に大拍手をしていたことだ。そして、演出の仕方が実に見事だと思ったシーンがあったことだ。ただ、もはや作品の細かい内容は忘れてしまっている。

 

さて、今回の作品である。最初思ったのは、ああいかにもイギリス英語だということだ。ウイリアムズが思いっきりもって回った言い回しをするのが、いかにもイギリス人的だなあ、と思った。どの役者も癖のない英語で、英語の勉強にはよさそうだと思った。それが冒頭頭に残った。そして、主人公のウイリアムズが英国紳士という感じがする。黒澤の原作ではもっとうらぶれたうだつの上がらない男という印象があった。

 

このイギリス版では、ウェイクリングという新しく区役所の同じ課に入った新人の目で語られる部分がある。その視線でみるというのが脚本としてよいなと思った。

 

ただ、一部同僚の女子マーガレットとデートをする場面で、ちょっと会話のシーンが長すぎると思った。ウイリアムズがいろいろ語るのだが、何かもう少し、あそこは演出的にうまく映像を使って語れなかったのか、という気はする。

 

黒澤明の「生きる」を観たのはもうかれこれ40年近く前のことだ。自分も老境と言っていい年代になった。その立場からこの作品を見ると、いろいろと考えさせられることはある。

 

限られた人生の残りを刹那的な楽しさを求めて生きるのか。何か自分なりに納得できることをするのか。考えさせられた。

 

元同僚の女子、マーガレットに付きまとい、老いらくの恋と呼ばれながらも追いすがる姿はいらいらするが、他人事とも思えない思いもした。

 

最後のシーン、警察官とウェイクリングの会話が良かった。警察官は雪の降る晩、完成した公園のブランコにウィリアムズが座って歌を歌っているのを見ていた。彼は声をかけるのを躊躇し歩み去ったが、寒い晩で彼は声をかけて帰るように促すべきではなかったかと、自責の念にかられていたのだ。恐らくウィリアムスはそのあと死んでしまったのかもしれない。ウェイクリングはそれに対して、いやあれで良かったのです。ウイリアムズさんはその時幸せだったのだと思いますと返し、それによって警察官は救われる思いがしたのだ。

 

 

ではまた。