先日、宮﨑駿監督の「君たちはどう生きるか」を観に行ってきた。公開日まで予告編もなく、一切の前情報がなかったため、(唯一あったのはアオサギの絵だけだ)逆にどのような作品なのかという興味をもって見に行くことになったのだ。それこそが制作側の意図したことだろうか。
見た率直な感想は、意外に良かった、だ。もっと変な作品になっているかと想像していたが、見終わって、決して嫌いではないな、と思った。
そして、不思議なことに、自宅へ帰ってきてから今もいくつかの断片的な絵が印象に残っている。例えば、海の遥か彼方に見える沢山の帆船のシーンだ。あるいは死の島としての森と巨大な墓石だ。空中に浮かぶ不思議な石や、スペイン風のアーチがある回廊だ。それらがまるで絵画のように心に残っている。また、久石譲のミニマムな音楽も印象に残った。ピアノが奏でる単旋律や和音は決して声高にメロディを奏でない。音楽が盛り立てるのではなく、むしろ、映像に沿うようにひっそりとミニマムの音を当てていく。これまでの作品にはない雰囲気を作り出していた。
不思議な物語だった。死と生と、想像と崩壊、友情を描くファンタジーだ。見る人によって、その受け取り方は違うかもしれない。
展開としては、前半はやや冗長な感じがして、もっと早く展開してもいいように感じた。それでも不思議な世界に入ってからは、奇想天外で飽きることなく見ることができた。最後はまるで抽象・前衛的なSFの世界のようにも思えた。
ところで、うちではセキセイインコを飼っているので、インコたちが大量に出てくるのには笑ったが、それにしてもこの映画にはたくさんの鳥たちが出てくる。それが不思議だった。なぜ、インコだったのか。
映画に勧善懲悪や見終わってスッキリしたいということを求める人にはお勧めしないが、そうでなければぜひ見てほしいと思った。
ではまた。